デザインについて考える(台湾①)

無機質なものに触らなくても見ただけでその感触が想像できるのは、これまでの経験でそれらに触れてきた記憶があるからに他ならないし、見た目でその触感を伝える(イメージさせる)ことができれば、その場の空気を作り出すことができる。木だけで作られた家と、石だけで作られた家では、中で繰り広げられる会話や動きも全く異なるものになっていくのを想像するだけでも楽しい。

台湾にあるバー、「draft land」で差し出されたコースターのデザインは、このバーの環境で差し出されるからこそ面白い。

鉄とガラスでできたドアを入ると床はコンクリートで固められ、カウンターテーブルは鏡面加工された鉄板を貼った板のようなもの。壁は塗りムラを残した漆喰のように加工されている。店内のメニューボードはアクリルで掲示され、その下にあるカクテルのそそぎ口は金属。そして化学実験をイメージさせる白衣のような制服。ここに入ると人は、鉱物や金属をイメージさせるものに取り囲まれてしまう。

そこにあって差し出されるコースターは粗雑すぎると言いたいほどの、白い紙に黒一色で押されたハンドスタンプのみ。薄暗い店内で、目にも楽しいカラフルなカクテルたちを映えさせ、引き立たせてくれる数少ないアイテムが、飲む人の手元に配される。

コースターに書かれた文字はどこか活版印刷のようなフォントと滲みを持ち、近未来的な店内環境の中で私たちの中にノスタルジーを視覚によってもたらしてくれる。

否が応でもグラスを置こうとそこに手を触れたとき、私たちは今自分が見ている硬質の環境と今自分が触れている軟質な感触の間で、心地よさを感じることができる。

硬いものに囲まれた中でふと触れた柔らかい感触と滲んだフォントの優しさから醸造される一瞬のリラックスは、人の会話や思考を湧き上がらせてくれる。

テクスチャーの点でデザインされ環境に適切に配置された、素晴らしいデザイン。