かりんとう進化論

 かりんとうをwikipediaで調べると、和菓子だと書いてある。そうか和菓子かと思ってかりんとうを思い浮かべてみると、なぜだか和菓子だと思うには違和感がある。 柿の種は和菓子だ。違和感はない。では今川焼きは?和菓子でしょう。せんべいは?これはもう和菓子で間違いない。 そこでもう一度かりんとうへ戻ってくると、なんとなくさっきより違和感が大きくなった気がする。本当にかりんとうは和菓子なんだろうか。  さらに、かりんとうにはその出自以外にもう一つ謎がある。  昨年東北地方を1週間かけてぐるっと巡った際、一番衝撃的だったのはかりんとうの形が地域によって異なることだった。  何を言っているんだ、かりんとうは短い棒状で黒糖蜜が染み込んだやつだろうと思ったあなたは中部地方出身。 ばがか、かりんとうは三角で薄っぺらい短冊状だべと思ったあなたは東北(秋田)出身。 ちゃうねん、かりんとはベーゴマみたいな渦巻きやねんと思ったあなたは関西出身。  このようにダーウィンフィンチ類のごとく全国で様々な形に独自に進化発展したかりんとうは、その名前の由来からいつ日本に入ってきたのか、はたまた日本生まれなのかどうか、よくわからない。  出自がよくわからないのに、確かに存在するかりんとうというお菓子。謎。 『事典和菓子の世界』中山圭子著を紐解くと、かりんとうの説明として 「小麦粉に 水飴などを 混ぜてこね、油で揚げて 蜜がけした菓子」 とある。みごと、5・7・5・7・7音でまとめられた美しい説明だな。などと余計なことを考えつつ先を読んでみると、「小麦粉を生地として油で揚げる製法からは唐菓子が連想されるが、同じ名前のものは見つかっていない」「金平糖と同類に見えるが、南蛮菓子としての記録はない」とある。  現在の日本の和菓子に影響を与えた舶来の菓子としては、唐菓子(とうがし、もしくはからくだもの)と南蛮菓子(なんばんがし)とがよく知られている。  唐菓子は飛鳥時代のころに遣唐使が日本に伝え、南蛮菓子は戦国時代以降にスペインやオランダから持ち込まれた。それぞれもともと独自に発展していた日本古来の菓子(もち・だんご等)と融合を重ねて、また鎌倉や江戸の文化にも影響を受けながら現在の和菓子は進化してきたとされている。  どうもかりんとうの起源としては、唐菓子が怪しいなと個人的ににらんでいる。というのも奈良県に、飛鳥時代に日本に伝わった唐果物の一つ、「ぶと」があるからだ。「ぶと」とは「米粉を練って揚げた餃子のような形」のお菓子で、「春日大社では神様のためにぶとをつくり、祭事ごとに供え」る。  これがかりんとうの源流なのではないかと、なんとなく想像してみる。  「ぶと」のようなお菓子はより安価な小麦粉へと原料を変えられながら、手軽に作れる!とお菓子として評判になって近畿圏を中心に広まり、江戸時代になって関東地方へ、そして叩いて伸ばされたり細かくちょん切られたりしながら東北へと流通するようになっていったのではないだろうか。だから近畿から中部にかけてのかりんとうは甘いのに、東北のかりんとうは味付けに醤油を使ってみたり、ゴマをまぶしてみたりとアレンジが(これでもかとばかりに)加えられているのではないだろうか。  そういえば、秋田には唐辛子を味付けに使用したピリ辛のかりんとうもあり、甘いかりんとうしか知らない中部地方出身者としては驚きだった。唐からやってきた菓子が姿形を変えられながら同胞と長い年月(どれくらいかはわからないけれど)を隔てて異国の地で再会したような感じだろうか。  そういえばかりんとうの名前の由来はわからなかったけれど、もしもその食べる時の音が由来なんだとしたら、バリントウやパリントウにならなくて良かったと思う。それでは少しワイルドだったりポップに過ぎる。やはりカリントウがしっくりくるなと思う。  個人的には、かりんとう本体よりも、たまにある黒蜜が固まっているところを齧ると、何とも言えない小さな幸せを感じる。  と、ここまで書いてふと心配になって一応調べて見ると、なんと唐辛子は唐の時代に中国から入ってきたものではなく、もっとも古いとされる説では1552年もしくは1542年(戦国時代)にポルトガル人が日本に伝えたとされている。当時の呼び名は南蛮胡椒。唐辛子の唐は単に外国からきたものを表すそう。  秋田の地で同郷の友と再会したのかとしみじみしていたら、なんと異国からはるばるやってきたもの同士の運命的な出会いだったというロマンチックなオチ。何でも調べてみるもんですな。 参考文献 『事典和菓子の世界』中山圭子 岩波書店 『都道府県の特産品 お菓子編』都道府県の特産品編集室 理論社 『南蛮から来た食文化』江後迪子 弦書房 『トウガラシの世界史』山本紀夫 中公新書

こんにゃくいつ食べる?

これまで何の疑問も持たずに、こんにゃくを食べてきた。 おでんなどに入っている何となく普通の灰色というかひじきの混ぜ込まれた弾力のあるこんにゃくは、味の滲みも悪いし、食べても味わいにかけるし、つかみどころがないという認識しかなかったけれど、最近食べた刺身こんにゃくが思いのほか印象深かったので、こんにゃくについて調べてみることにした。 と言ってもやはり刺身こんにゃくもこんにゃくであるので、その認識としても、緑色で(アオサが練りこまれている)普通のこんにゃくよりちょっとプルプルひんやりしていて、普通のこんにゃくよりさらに箸で掴みづらく、普通のこんにゃくと違って酢味噌をつけていただくものだと思って食べてきた。 が、どうやらいろいろ調べてみると、刺身こんにゃくにもいろいろと種類があるらしい。 まず一つが、やまふぐ。 こちらは手順は普通のこんにゃくつくりと同じであるが、3割ほど水を減らし、こんにゃくを練る時間を多めにする。灰汁(あく)は普通のこんにゃくの倍量を入れて(こんにゃくは水で練ったこんにゃく粉に灰汁を入れないと固まらない)よくかき混ぜる。 たしかに山のフグとはよく言ったもので、フグだと思って食べれば食感もフグに思えてくる。薄く切ればフグに見えないこともない。フグを食べたことはないけれど。 もう一方は、とろさし。 こちらは逆に水の量を2、3割多めにする。こんにゃくを練る時間も多めにする。灰汁を溶く水の量も3割程度多くし、よく練る。 こちらはやまふぐと対照的にモッチモチのプルンプルンな食感が心地よい。トロのように口の中でとろけるようなことはないけれど(こんにゃくだから)、先日食べた刺身こんにゃくは自然に囲まれて水も綺麗な三重県飯高町で作られた「とろさし」だったので、まるで清流を食べているかのような気分になれた。 こんにゃくはいつ頃日本に入ってきたかは定かではない。国内に野生のこんにゃくは生えていない。 こんにゃくが日本に持ち込まれたのは、縄文時代にサトイモと一緒に入ってきた説や、仏教と共に入ってきた説があり、またどちらも本当っぽいから悩ましい。こんにゃく芋はサトイモの親戚だから一緒に日本に入ってきたと言われればそんな気もするし、こんにゃく芋は薬効(砂出し)があり、元は精進料理として受け入れられこれは仏教に繋がりがあると言われればそんな気もする。ボーズミート(坊主肉)として肉の代わりに食べていたのではないかと想像する。 こんにゃくの花を取り囲む苞(ほう)の部分は仏焔苞(ぶつえんほう)と呼ばれ、他のサトイモ科の植物にも見られる。これは花びらではなく葉が無数のつぼみを取り囲んだもので、仏焔苞自体はシュッとしたラフレシア(同じく不気味な見た目をもつ東南アジアやマレー半島に生息する巨大花)に見えなくもないが、全く異なる。 珍しいこんにゃくとしては、赤こんにゃくがある。滋賀県近江八幡のあたりにしか売っていないと言われるこんにゃくで、三二化鉄を入れて赤くしているらしい。実際に近江八幡へ行くとスーパーに色々な種類が売られていた。あく抜きのために茹でて皿に乗せるとレバーのような見た目で、そういえば台湾の夜市で食べた豚の血のケーキなるものがあったなとふと思い出した。それはもち米に豚の血を混ぜて固めて、蒸しあげ、ピーナッツ粉をまぶしたもので、一度食べたけれど味はそんなに記憶に残っていない。 それとおなじで、この赤こんにゃくにもピーナッツ粉をまぶして食べたら美味しいんじゃないかとちらっと思ったけれど、まだ試していない。ピーナッツ粉だけだと味が物足りないからと味噌なんかつけたら田楽になってしまう。 赤こんにゃくを買ったお店に置いてあったチラシには赤い鎧が描かれていたし、かの織田信長がこんにゃくを赤く染めさせて作らせたという話も、なんとなく本当っぽいなと信じられるような話であった。 兎にも角にもいろいろなこんにゃくを食べ比べてみて、こんにゃくの美味しさは水の美味しさであるように思う。和紙の品質にはそこに見えない水の綺麗さが影響するように、ちょっと見た目では想像しにくいこんにゃくで固定化された水というものが、その美味しさを左右しているように思う。味を染み込ませて食べるのも美味しいけれど、やはりそのままちょっと生姜醤油をつけて食べても美味しかった。 参考文献 『新特産シリーズ コンニャク–栽培から加工・販売まで』 群馬県特作技術研究会 農文協 『コンニャクと生きる 信州と上州の山里をつなぐ』 里見哲夫 柏企画 『芋と近江のくらし』 滋賀の食事文化研究会編 サンライズ出版

柚子 –和柑橘の楽しみ–

 柚子についていろいろ調べていると、ふとオレンジやレモンとの違いが気になった。  まず、数々の西洋絵画に描かれてきたオレンジやレモンに対して、柚子の描かれた絵を探すと意外と見つからない。奈良時代にはすでに日本に入っていてきていたと言われる柚子は、平安時代には「薬用あるいは果汁を食酢として」料理に使用されており、松尾芭蕉の「柚の花や むかししのばん 料理の間」や、夏目漱石の「いたつきも 久しくなりぬ 柚は黄に」など俳句に読まれてもいる。 当時から、あくまで薬用、健康、食用との関連としてみられる傾向が強く、あげく私たちは冬には湯に入れて一年の健康を祈りながらそれに浸かる。  これに対してとくにヨーロッパでは、オレンジやレモンは特に「異国的なニュアンス」と豊饒性を持った果物と受け取られ、「神が人間に惜しみなく与える恩寵の象徴」として、明るくエネルギッシュでみずみずしいフルーツとして捉えられているようだ。ボッティチェリのヴィーナスの誕生に描かれているのは金色に塗られたオレンジの木であり、また反対に映画「ゴッドファーザー」では、暴力や死の象徴として描かれていたりもする。冬場にオレンジを食べることは(クリスマスツリーにオレンジを飾ったりもした)、富裕層の特権であった。(ゴッドファーザーでもオレンジはクリスマスの食べ物として描かれる)  なんとなく理由はわからないけれど、柚子のことを個人的には和風な柑橘だなと感じている。その香りの特徴であるわずかな若草やハーブの香りが、緑茶や山菜、い草の香りに通じるものがあるように思う。それが海外では今、オリエンタルとも違う(柑橘類はアジア原産のものが多いため、もともとオリエンタルなフルーツとして受け入れられている)アジアから持ち込まれた香りとして感じられているのだろうか。  柚子は香酸柑橘類に分類され、香りや酸味が強いため果汁を絞ってそのままジュースにはできない。果実一つあたりに含まれる種子も多いため、果汁のしたたる果肉を太陽の下で頬張ることもできず、皮を刻んで料理の香りづけに使ったりすることが多かった。しかし最近では、特に菓子などで柚子(果皮を干したりパウダー状にしたものなど)をメイン食材としてふんだんに使用したものも見られるようになった。先日食べた柚子ケーキは、一口食べるとまるで柚子果汁のシャワーを全身に浴びているかのような感覚を味わうほどの爽やかさだった。  レモンやオレンジ、そして柚子の持つ爽やかさやみずみずしさは、旬ではないとはいえ夏にぴったりだ。アントニオ・タブッキの『供述によるとペレイラは』という小説の中で、主人公は夏の暑い盛りにカフェで香草入りオムレツを食べながら冷えたレモネードを飲む。  そういうイメージはまだ柚子にはないが、例えばマティーニの仕上げにグラスの縁よりも低いところから皮を折るようにして飛ばし入れるレモンの精油を、今年の冬至には柚子でやってみても面白いかもしれない。 参考図書 ピエール・ラスロー『柑橘類の文化史』一灯社 音井格『新特産シリーズ ユズ 栽培から加工・売り方まで』農文協 沢村正義『ユズの香りー柚子は日本が世界に誇れる柑橘ー』フレグランスジャーナル社 三輪正幸『NHK趣味の園芸12ヶ月栽培ナビ6 かんきつ類』NHK出版 アントニオ・タブッキ『供述によるとペレイラは』白水社

「そうだ輸出しよう」と思ったら(番外編・コンテナタイプの話)

コンテナの種類について。 海上コンテナには種類がいくつかあるため、積み込みたい商品の特性に合った最適なものを選ぶ必要があります。4つのカテゴリーに分けて説明致します。 Dry container(ドライ・コンテナ) 一番よく使用されているのは、ドライ・コンテナ(Dry Container)といって温度の管理を必要としない荷物をのせるためのコンテナです。 サイズは3タイプあり、20フィート(長さ約6メートル×高さ約2.5メートル)と40フィート(長さ約12メートル×高さ2.5メートル)、そして40フィートのハイキューブ(HQ)(40フィートと同じ長さで、高さが30センチほど高い)に分けられます。 30センチの違いでも、実際に見ると随分高く感じます。 それぞれ重量制限があるため、荷物の大きさがコンテナサイズ内であっても重すぎるために積み込み個数を制限する必要も出てきます。 当ブログに載せている写真に写っているコンテナは、大抵このタイプです。 Reefer container (冷蔵機能付きコンテナ) 生鮮食品や溶けやすいもの(チョコレートなど)を運ぶなら、温度の管理ができるリーファーコンテナ(Reefer Container)を使う必要があります。 冷蔵・冷凍どちらも温度設定ができます。 CY(港のコンテナ置き場)から持ち出されてから輸入者に引き取られるまでの庫内温度を記録しているため、商品破損等により保険適用を求める場合にはその記録がどこで電源が落ちてしまったのかを特定する重要な証拠となります。 コンテナ積載エンジンをかけっぱなしにして積み込みをするため、大変うるさくなりますが、真夏の作業時にはコンテナ内は天国です。 コンテナサイズは20フィート、40フィートがありますが、床には排水用の溝があり、冷気を循環させるため積み込む荷物の高さ制限があり、またコンテナ前方には冷却用エンジン部があるため、内容積はドライコンテナよりもかなり少なくなります。 Open container (オープン・コンテナ) 上にあげた2点のドライ・コンテナとリーファーコンテナは、荷物を詰めた後に扉を施錠して現地まで運びます。 これらの密封されたコンテナとは違い、商品がコンテナに収まらない高さや重さである場合には、屋根の部分や左右の部分が開いたコンテナを使用します。 オープントップコンテナ(Open top container)、フラットラックコンテナ(Flat rack container)、フラットベッドコンテナ(Flat bed container)などがそうです。 弊社では使用したことはありませんが、港近くでは見かけることがあり、感動します。 Tank container タンク・コンテナ(Tank Container)という液体貨物を対象にしたコンテナもあります。主に果汁やお酒の輸送に使われます。こちらも弊社では使用したことはなく、見かけたこともありません。いつか写真に収めてみたいコンテナです。 参考文献  海上貨物のコンテナの種類(ジェトロ) https://www.jetro.go.jp/world/qa/04J-120105.html

「そうだ、輸出しよう」と思ったら(書類編)

5. 書類編について前回に引き続き話していきます。 (前回までの記事はこちら→1 調査編, 2 商談編, 3 契約編, 4商品手配編) 今回は、輸出で必要な書類の準備について説明します。 一番最初の調査編でも少し触れましたが、輸出の際はいくつかの通関用の書類を用意する必要があります。 代表的なものですと、インボイス(商品の値段が記載されたもの)やパッキングリスト(重量や体積が記載されたもの)などになります。 日本での輸出通関と輸入者側の通関では共通して提出するものもありますし、現地輸入時にのみ必要な書類もあります。 書類の準備においてゴールとなるのが、通称B/Lと呼ばれる書類を発行してもらうことです。 船会社が出港日に発行する船荷証券(ふなにしょうけん)であり、通称B/L(正式にはBill of Lading)と呼ばれるものが、輸出・輸入問わず貿易で最も大事な書類です。 B/Lは、パッケージ数や重量などコンテナの中身を要約して記載した書類となり、それを見ればコンテナに何がどれだけ積み込まれているのかわかるようになっています。 また、荷物の所有権をあらわす有価証券(証明書としての機能)であるため、紛失した場合輸入者はコンテナを受け取ることができなくなります。そのままコンテナが返送されてきた場合でも、B/Lがなければ輸出者ですらコンテナを開けることはできません。 書類の提出締切日(コンテナの搬入締切日と同じであることが多い)までに、”B/Lを発行するために”必要な書類を準備するというのが基本的な理解です。 B/Lが目標(ゴール)とすると、通関業者・船会社に「このコンテナの中にはこういうものが入っています」とわかりやすく補足説明するために用意するのが他の書類の目的です。 例えば、B/L上に商品ジャンルとしてキャンディと記載されている場合について考えます。 キャンディといってもいくつかの種類が想像できるかと思います。 その時インボイスとパッキングリストで具体的にどういう種類でどのくらいの量か提示することができます。 これらの提出書類を見て船会社はB/Lを作成していきます。 また、商品仕向地のよっては、お客様より原産地証明や放射線証明などの取得依頼を受けることもあります。 これらはどちらかというと輸入時の審査通過のための書類であり、免税や検査免除などの目的があります。 ゴールと目的が理解できれば(手間はかかりますが)書類の用意はまったく難しくありません。輸入者側と規制や必要書類の有無などについて事前に打ち合わせし、通関提出書類を用意していけば問題になることは少ないでしょう。

「そうだ、輸出しよう」と思ったら(商品手配編)

今回は商品手配編として、商品準備からバンニング(荷物の積み込み作業)の詳細について説明します。 (前回までの記事はこちら→1 調査編, 2 商談編, 3 契約編)   前回の契約編でも説明しましたが、FOB取引の場合、日本の出発港まで荷物を持っていくのは輸出者側の責任となります。お客様より注文が入ったら商品を積み込むコンテナを手配するところから、港での通関審査用の書類作成、通関依頼までの業務を行います。   港にあるコンテナ・ヤード(コンテナ置き場)では、出航予定のコンテナ船ごとに荷物の受け入れ締切日(カット日と呼びます)が設けられており、その日までに主に次の2つのタスクが完了するよう、並行して作業を進めていきます。 ①商品の手配と積み込み、国内輸送(コンテナヤードまで) ②輸出書類の提出   今回は2つのうち①荷物の手配について説明致します。   船会社に定期コンテナ船のスケジュールを確認し、メーカー様と製造スケジュールについて打ち合わせ、コンテナ積込日を決めます。   積み込み日までに商品を「あとは現地の売り場に並べるだけ」という状態にしていきますが、そのための重要な作業として、商品ラベルの作成・貼付けがあります。 原材料の翻訳や輸入禁止原材料が入っていないかの再確認、成分表の設定など各国のルールに従ってラベルを作成していきます。   例えばアメリカでは、生活習慣病などを予防するために1日あたりの摂取量をラベルに表示することが必須となっています。日本では問題とならない成分でも、基本的な摂取量が違うと(大量摂取等により)人体に悪影響が出る可能性があるため、政府が制限を呼びかけています。   積込についても注意点がいくつかあります。   コンテナは輸送中、海上で日に晒され続けるため高温になりやすく、チョコレートや半生菓子など溶けやすく劣化しやすい商品を輸出するにあたっては、費用は高くなりますが冷蔵機能を有するコンテナを使用する場合もあります。 8月の一番暑い時期に冷蔵設備なしにチョコレートを出荷し、現地に着いた時点で溶けてしまい全て廃棄処分となった場合、残念ながら輸送保険が適用される可能性は低いでしょう。輸出者によっては、ドライコンテナ内壁に発泡スチロールの板を貼り付けるなど工夫をしているところもあります。   また移動時の荷崩れが原因でデバンニング(荷下ろし作業)する倉庫作業員に危険が及ぶことのないよう、荷物を積込する際にも注意しなくてはなりません。   お客様に安心してご購入いただき、現地消費者の方々に手軽に日本旅行気分を味わって頂いたり、家庭での新しい定番食として楽しんでいただいたりと、海外のお客様に日本の食品を手段として様々な楽しみ方を提供していけるよう、日々業務にあたっています。  

「そうだ、輸出しよう」と思ったら(契約編)

今回は、「そうだ、輸出しよう」と思ったら”契約編”になります。 (前回までの記事はこちら→1 調査編, 2 商談編) 輸出契約、特に条件についてお客様と取り決めをするときに使用するのが、インコタームズ (Incoterms)という国際商業会議所 (International Chamber of Commerce: ICC) が策定した貿易条件です。 この貿易条件は、法律のような強制力がなく任意規則であるため、お客様と話し合い、契約書に「本契約で使用されている貿易条件は、インコタームズ2010によって解釈する」というような約款を入れることが一般的です。 インコタームズは、「売主は貨物輸送のどの時点まで費用(輸送費と保険料)とリスク(コンテナ輸送中の事故、船の沈没など)を負担するのか?そして、どの時点からそれら(費用とリスク)は買主の負担になるのか?」の”地点”を規定しています。 国内取引の場合は、大抵は納品先のスーパーや倉庫に納品されるまでが売主の責任となり、運賃負担も売主であることが多いです。 もちろんロット問題もありますので、基本的に契約の時点で都度決めているかと思います。 海外取引の場合にはこの責任問題について輸出者、輸入者間によって条件の解釈に不一致があると貿易が円滑に行われません。 貿易を取り締まる条約や裁判所もありますが、現実的には適用のハードルが高い為、輸送費(燃料費などの海上運賃)、保険料(商品の破損を保障するもの)、リスク(災害などによる船の沈没)など、負担区分と責任の所在としての明確な地点を取り決め、トラブルを避けるために世界的に活用されているのがインコタームズになります。 例として2つの主要な貿易条件について紹介します。 1. FOB(Free on Board)本船渡しについて リスク:出発地の船に商品が乗るまで(正確には船の縁を荷物が越えて船上に置かれるまで)輸出者の危険負担範囲となります。 費用負担:輸出する側は、船に商品が乗るまで(リスクの範囲と同じ)の国内輸送費用を負担し、輸入者が輸入港から自社工場や販売店までの輸送費を負担します。 2. CFR(Cost and Freight)運賃込み リスク:出発港の船に商品が乗るまでが輸出者の危険負担範囲となります。 費用負担:輸出する側は、輸入港に商品が到着するまで(リスクの範囲とは異なる)の費用を負担します。 どちらも輸出側は、日本を出発する船に商品が乗るまでが危険負担範囲となっています。違うのは費用負担の部分となり、海上運賃を支払う役割を定めています。 輸入者はFOBを選択すれば自分で船会社を選べるため貨物の到着スケジュールを把握、コントロールすることができますが商品価格は高くなり、CFRを選べばコンテナ船のスケジュールは把握できなくなりますが、商品価格を低く抑えることができます。 基本的に、輸出者はCFRもしくはCIF(CFRに合わせて保険料も負担)を、輸入者はFOBを希望する傾向が多くなります。 貿易条件を選択し、決済通貨・費用計算を行いますので契約において非常に重要な要素となってきます。 参考文献: ジェトロ インコタームズ2010 (https://www.jetro.go.jp/world/qa/04C-070304.html) インコタームズ (https://ja.wikipedia)  

ユニオンスクエアグリーンマーケット(ニューヨーク)

ニューヨークの12月、クリスマスの少し前。高層ビル群の隙間でファーマーズマーケットが開かれていることがあり、ふらりと立ち寄ってみると、建物の間を足早に歩き去るビジネスマンたちに混じって野菜や魚、フルーツ(アップルビネガー含む)をゆったりと買い求める人たちがいた。 手作り感溢れるこのユニオン・スクエア・グリーンマーケットには、農家のクラフトマンシップが溢れており、その創造力は見ていて飽きることがない。 このネギのディスプレイはその商品説明の紙質から洗濯バサミ(?)や木箱にと細部に渡って、「この商品が畑から自然のまま最短時間でここへ運ばれてきたことをどれだけ購買者に想像させることができるか」にこだわって作られている。 これを見れば多くの人は、ただネギを食べるだけでなく、ネギの育ってきた環境、自然のエネルギーまでもをそのまま身体に取り入れられることをイメージさせられてしまう。綺麗に選別されて衛生的で科学的なビニールの袋に入れられたネギとは同じネギでも与えるイメージが全く違うものになってしまう。 ネーミングの分野にも、創造性を発揮する余地がまだまだあることを思い知らされる。説明書き部分には、どんな野菜か、どんな料理に使えるか、栄養素の効果・効能が書かれている。 じゃがいも一つとっても種類が多く、それぞれ品種に丁寧な説明書きがつけられている。どうすれば購買者に興味を持ってもらえる説明書きが書けるかの参考になる。 販売するにはいい商品をつくるだけではなく、購買者にそれが伝わるようにするにはどう表現するかという創造力も必要であり、試行錯誤する余地はまだまだあるということを考えさせられる。  

「そうだ、輸出しよう」と思ったら(商談編)

前回は輸出を始める前の調査について説明致しました。 (前回の記事はこちら→「そうだ、輸出しよう」と思ったら(調査編) http://itohtrading.jp/blog-export) 食品を輸出する際の問題点(禁止原材料を使っていないなど)をクリアできるとわかったら、次は海外のお客様と価格や数量などを決める具体的な商談に進みます。 商品紹介にあたっては、こちらから商品を提案する場合とお客様から具体的な商品名の問い合わせを受ける場合の2種類があります。 商品を提案する場合には、既存の商品ジャンルから発売される新商品もあれば、もちろん扱ったことのない新規ジャンルのお取扱いもあります。 季節、催事ごとに売れる商品も変わり、また食文化の違う海外では新しい客層に売り込むチャンスと捉え、国内の製造会社様より商品ご提案を頂くことも多いです。 現地のバイヤーからの問い合わせを受けた際は、すぐに条件に合った商品をご紹介できるよう常に様々な食品ジャンルに対応できるようにしております。 日本では毎年○○ブームのように限定された食材やパッケージなどに変化がありますので、輸出はそういった新しいものを次々と海外に発信していく楽しさもあります。 商品が決まったら、価格などの御見積もりはもちろん、出荷条件や各種証明書の発行可否についてもバイヤーと話し合います。 新規取り扱い商品については、現地でどのくらい売れるのか未知数の部分もありますので考慮して出荷の詳細をつめていきます。 一番重要なのは現地の売り場についてしっかりと考えることです。 たとえば、私たちが海外で買い物する際、英語以外のパッケージであると中身がよくわからなくて買いにくいこともあるかと思います。 ついついよく見る定番商品に手が伸びがちです。 英語や現地の言語に翻訳した原材料ラベルを裏面に貼付けすることが義務付けられてはいますが、売り場での印象や今後のブランディングのことも考えて、輸出用商品は思い切って海外用パッケージデザインに変更することも大事になってきます。 現地のバイヤーとの交渉や売り場提案など、製品の特徴や良さを活かした商談を進めて契約に繋げています。  

ショップバッグについて台湾の事例

海外で電車などに乗っていると、多分家で焼いたんだろうと思われるホールケーキを丸々お皿のままラップだけかけた状態で持ち込んでいる人や、カバンを持たずに本を持って歩いているような人も多い。そんな光景は、一見無味乾燥になりがちな電車内の風景にあって様々な想像(誰かの誕生日なのかな。どこまで持っていくのだろう。とか、この人の本棚には他にどんな本が飾られているのだろう。とか)を掻き立ててくれる。 一方お店で買い物をすれば、商品は大抵中身が見えないようになったプラスチックバッグや紙袋に入れられて渡される。袋に入っているものは当たり前だけれど持ち歩きやすいし、ものを買うという極めてプライベートな(欲求の顕在化とでも言おうと思えば言える)行為を他者の視線から守ってくれる。袋に自分の店の名前を入れるのもいい宣伝になる。 とはいえ、大抵のプラスチック袋はとてもお洒落でデザイン的にも優れているとは言い難いものが多い。単にお店から家まで自分の買ったものを誰にも中身が見えないように持ち帰るという機能さえあればそれで十分だと考えられているからだ。 けれど、今回台湾で買ってきた会社用のお土産を入れられたショッピングバッグは、そうは考えなかったらしい。 持ち手がくしゃくしゃなのは私が台湾からずっと手持ちで持って帰ってきたからだが、お店で商品を購入するとお店の人はまず透明な袋を取り出してそこへくしゃくしゃにした黄緑色の紙と商品を入れる。さらに店名の印刷された半透明な白いフィルムを片方の持ち手の穴にだけ通し半分に折って、下へ垂らす。フィルムの真ん中、折り目の部分には内側に両面テープが貼られているので、持ち運んでいるときにフィルムが動いたり取れてしまったりすることはない。 このショッピングバッグの面白い点は、中にどんなものを入れてもそのパッケージデザインがそれを包む袋のデザインの一部として取り込まれてしまうということだ。このお店はセレクトショップであり、もちろんパッケージデザインのみを基準として商品を集めているわけではないと思うが、このシンプルで目にも優しいデザインの袋は、中に入れられた商品から(それがどんな商品であろうと)、「グラフィック」を分離し、それを携える人の「ファッション」の一部として認識させてしまう。 袋としての実用的機能を持たせるだけでなく、パッケージデザインをファッションへと機能変化させてしまうことに成功した、素晴らしいデザイン。