デザインについて考える(台湾②)

言葉では伝えたい思いの半分も伝えられないというけれど、商品パッケージにおいてはデザインでそのもう半分のすくい取れなかった思いを伝えることができる。

特に海外の商品パッケージを見ていると、「書かれていることがわからない」というハードルが、逆にモチーフやバランスに注目する機会を与えてくれる。デザインの可能性や面白さはそういう時に唐突に浮き彫りになってくるものである。

台湾で購入したこの商品。英語が読めればミルク烏龍茶味のソフトキャンディーだとわかるが、商品自体はそのモチーフのせいで飴とは思えないくらいのボリュームと存在感、重量感をはなっている。

パッケージに使われている色は白、薄い緑、ちょっと濃い緑、濃い緑、紺に近い緑の4種類の緑を使うなど、緑へのこだわりがすごい。

日本では烏龍茶といえばペットボトルに入った茶色い飲み物だが、茶葉をまず湯で洗って急須で淹れる文化のある台湾では烏龍茶といえば連想されるのはその葉の緑色。

こういう海外の文化的な特徴が現れてくるというところも、海外パッケージデザインを観察する楽しみの一つだ。

紙パックの中央部には、本当は実在しない中身である液体がたぷんたぷんと揺れていることを連想させるよう曲線にふちを切られた数種類のグリーンベタ塗りが少しずつずらされながら背景として配置され、パッケージ全体に重量的安定感をもたらしているし、もちろんこれが烏龍茶味の商品であることを適切にアピールできてもいる。

また中央部を挟むように上下に配置された濃緑色の茶葉と黄緑のダイヤによる水玉模様は上品な可愛らしさを演出するとともに、白地で緩慢になりそうなパッケージ上下の空間を引き締めてもいる。

パッケージのモチーフからもわかるようにこの商品はそもそも「内容物」ではなく「内容物の素材」ありきのデザインだ。実はこのほかにもう一種類ミルク紅茶キャンディーがあり、そちらもキャンディーではなく、「これはミルクと紅茶である」というコンセプトをもってパッケージデザインされている。

この商品はそのモチーフを、一度”素材そのもの”にまで深く潜って取り出してくるという過程を経ているため、飴であるということにとらわれない発想を持ってデザインを組み上げることに成功している。

商品としてのジャンルにこだわることをやめた結果として表現の新たな可能性を獲得した、素晴らしいデザイン。