以前出汁パックをいろいろと買ってきて味比べをして以来、毎回味噌汁を作るときは出汁を取るようになった。
出汁パックと侮るなかれ、カツオ節をメインに使っているものもあれば煮干しをメインに使っているものもあるし、醤油で味をつけた便利なもの、塩だけで味付けした上品なものなど多種多様だった。うちは出汁だけで勝負してます!といういさぎよい出汁パックもあって、そういうのはこちらも「よしそれなら」と膝を打って鶏肉ときゅうりをそれで煮たりして丁寧に料理してみようと思ッタリスル(思うだけ)。
5分程度味噌を入れる前にパックを煮るだけで味噌汁が劇的に美味しくなるのだから(出汁入りの味噌もあるけれど)便利だなと思う。顆粒の出汁も便利だけれどなんとなく物足りない時があるし、かと言って鰹節削り機でごりごりと削り節をこしらえて昆布だしと合わせてなどと家でやる元気もない(道具もない)時など重宝する。
そもそも出汁パックに使われる原料のカツオ節に注目すると、その製造の段階別に名称が異なるのが非常にややこしい。
おそらく網羅的に書いたところで読んでくださる人もいないだろうからゆるく書いてみるけれど、さばいた生カツオを煮て旨味成分(イノシン酸とか)を閉じ込め、少しだけ焙乾(ばいかん)(煙と熱であぶって乾かすこと)したものは生利節(なまりぶし)。これは堅くない。ただの茹でたカツオのような味と食感。
これをさらに焙乾したものが荒節(あらぶし)。荒節にカビをつけることで水分をさらに抜きながらカツオの脂肪を分解し熟成させたものを、その回数によって上枯節、本枯節(ほんかれぶし)(仕上げ節)などと呼ぶ。
荒節を削ったフレーク状のものを花かつおと言い、ということはスーパーに売られている花かつおパックは荒節を削ったものなんですねと気づく。本枯まで加工すると時間がかかるのでより短時間でできる荒節を作り早く資金を回収するのであろうかと思いをはせてみる。
他にも〇〇節のオンパレードでとても全てを説明する気にもならない。(興味があれば参考文献をお読みください)
調べてみると、世界広しといえどもカツオ節を作っているのは日本とモルディブだけらしい。モルディブではカツオは「モルディブフィッシュの愛称を与えられていることでもわかるとおり、国民から最も愛され、何物にも代え難い必需食品とされている」。彼らは生カツオを食べることはせず、生利節を細かく切ってカレーに入れたり、荒節を細かく砕いて料理に入れたりする(出汁を取るのは日本だけではないらしい)。もとは虫除けのためにカツオを燻製にし始めたらしい。ぜひともいつかモルディブへ行ってカツオカレーを食べてみたいなと思う。
ふと思ったけれど、もしかしてカレーを作る際、野菜や肉と一緒に出汁パックも煮詰めてみたらけっこう美味しいカレーになるのではなかろうか。いろいろな出汁パックを使っていつか食べ比べしてみたいと思う。
そういえば話は逸れるけれど、以前中国人に麺料理を作ってもらったことがある。中国は麺に関しても膨大な種類があってその時食べたものがどんな麺だったかはわからないけれど、一つ覚えているのが、スープになんの味もなかったことだ。ザ・無味。
ただのお湯に麺を入れ具をのせて差し出された一品はなんとも味気ないものだったと今でも思い出すが、あれがそういうものなのか、それとも失敗だったのかは今でもよくわからない。
スープの話に入っていくとまだ調べきれていないこともあるし取り止めがなくなるので、またいつか書いてみたいとおもう。
いづれにしても、カツオに限らず漁業というものは獲れるか獲れないかの運に支配されるところがある。だからこそ焼津の漁業資料館で見た大漁を祈願する旗はもちろんのこと、当時使われていた漁師のお弁当箱にも大漁祈願の文字が書かれているのを見ると、遠く南洋までカツオを追い求めて行ったかつての漁師たちのただならぬ決意が見えるような気がした。
参考文献
『ものと人間の文化史 97 鰹節』 宮下章 法政大学出版局
『かつお節と日本人』 宮内泰介・藤林泰 岩波書店
『和食とはなにか』 原田信男 kadokawa
『和食文化ブックレット7 うま味の秘密』 伏木亨 思文閣出版