合理的ベストクリームソーダ(後編)

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世の中には、混ぜて食べる料理と混ぜずに食べる料理があります。

 

例えば韓国料理のピビンパなどはご飯とナムルやキムチ、肉、卵などを皿の中でよく混ぜて食べますし、ベトナムのフォーも提供された麺の上に香草やもやし、唐辛子などを自分で盛り付けて(個人的にはホットチリソースをかけるのが好きです)混ぜ、スプーンに一口分ずつ取って食べます。

 

逆に混ぜない料理というと、例えばロコモコなんかは混ぜないんじゃないでしょうか。あとハンバーガーとかピザとか。欧米の食べ物は混ぜるものが少ない気がします。

 

そのほか、カレーは混ぜる派と混ぜない派がいそうです。私はカレー混ぜない派ですが。

 

ではプリンはどうでしょうか。

 

私はプリン、特にカップの底にカラメルの入ったタイプのプリンを食べるときは、まずはじめにカスタード部分を全て食べ(カラメルとカスタードの設置面ギリギリまでスプーンでこそいで)そのあとカラメルだけをいただきます。

 

私にとっては至極当たり前の食べ方なのですが意外に周囲には全く理解者がいませんで、人と一緒にプリンを食べると異様な目つきで見つめられることもしばしばです。

 

そんな私がどのようにクリームソーダ を飲む(食べる?)か、もうお気づきでしょう。

そう、私はまずクリームソーダ と対峙すると、アイスクリーム部分を全て食べ、そのあとソーダを飲みます。

 

そんな話をクリームソーダ フリークの知人にしたところ、まずいきなりの「意味な」というセリフと冷笑のあとで、そいつのクリームソーダ の飲み方についてのこだわりを披露されたのです。

 

知人曰く、「まずソーダを3割ほど飲んだところでアイスクリームを少し食べ、時間をかけてアイスクリームとソーダを混ぜ合わせていく」そう。

 

私は自分がどれほど偏狭な視野でクリームソーダ と向き合っていたかを思い知らされたと同時になんと面倒でねちっこい食べ方だろうか、こいつはきっと性格もねちっこくて陰気な奴に違いないと思いながら、でも確かに試してみる価値はあるなと思い直し、後日出直しクリームソーダ ツアーにいそいそと出かけて行ったのであります。

 

ネットで調べた昭和から続くという純喫茶に入って朝っぱらからクリームソーダを注文し、まずはソーダを一口。ふむふむ、シロップは少し薄めかのう。3割飲むんだっけ?もうちょっと飲んでおこう。待って、3割ってソーダの量に対して3割?それともアイスクリームの体積を含めての3割?などと思いながらソーダを少しだけ飲み、アイスクリームを少し食べながらソーダに溶かしていきます。

 

ゆっくりとアイスクリームとソーダをスプーンで混ぜながら、店内の薄暗い証明、ハワイアンミュージック、クラシックなソファーとテーブル、レトロモダンなポスターなど、店主のこだわりが醸し出す落ち着いた雰囲気の中で、ここに流れる時間はきっと昭和の頃からずっと変わっていないんだろうなと考えていました。

 

なんとかアイスクリームを溶かし終えて一口飲んでみると、確かにソーダだけ飲んでいたのとはまた違う甘みが感じられ、これはこれで美味しい。というか、たぶんこれがクリームソーダ の正解なのかもしれないとも思えてくる味になっているではありませんか。

 

しかもこれなら、先に食べるアイスクリームの量によって最終的にソーダに溶かすアイスクリームの量を調整できるのです。

 

これまで何の気なしにクリームソーダ を注文していたので気づきませんでしたが、もしかしたら「クリームソーダになります」と提供されるクリームソーダ は、自分で焼くタイプのお好み焼き屋さんで提供されるタネや具材の入ったボウルとおなじく、それを自分の好みのクリームソーダ に仕上げる工程も含めてのクリームソーダ だったのかもしれません。

 

クリームソーダ の作法を身につけた私は、これからも自分にとってのベストクリームソーダ を探す旅を続けるでしょう。

 

時にはバニラアイスの上に小さなストロベリーシャーベットが載っていたり、ポスター写真はソフトクリームタイプのクリームソーダなのに出てきたらホイップクリームが載っていた等、イレギュラーな暴挙に出会うこともあるでしょう。

 

ベストクリームソーダ探しの旅 に疲れたり、心が折れそうになったときは、知り合いのカフェのオーナーが言っていたこの言葉を思い出してみてください。

 

「クリームソーダは、雰囲気を味わうものだ」

 

コーヒーや紅茶もいいですが、みなさまぜひ、お気に入りの純喫茶と(じぶんにとっての)完璧なクリームソーダを見つけてみてはいかがでしょうか。

それなりに贅沢な時間を過ごせること請け合いです。