ゴミから学ぶデザインモチーフ(オーストラリア①)

街の風景の中に唐突に現れるパッケージは、大抵があまり美しいとは言えない。ゴミ箱に捨てるべきものが路上や植え込みに捨てられているのを見るのはがっかりするが、瞬時に発生する善悪の判断をほんの僅かの時間脇に置いて、パッケージデザインのモチーフについて考察したい。

オーストラリアで見かけて色遣いが気になるなと思い撮ってしまったこの紙カップにおいて、まず目を引くのは背景に使われている黒色。商品名であるSLURPEEのロゴも、専売社であるセブンイレブンのロゴも(写真では見えないが)、黒で統一されている。その上に10以上もの色を使いストリートアートを思わせるようなグラフィックを描くことで、商品名やセブンイレブンのCIと絵とを互いに引き立てあうような作用を引き出している。

カップのデザインは各国・地域別でそれぞれオリジナルなものになっているが、その中でSLURPEEのフォントだけは統一されている。

カップデザインの種類は黒を含めて7種類あり、どれもカラフルでポップでアーティスティックだ。

SLURPEEのデザイン方針として特徴的なのは、販売先の現地のデザイン企業にパッケージデザインを依頼する点だ。

それはそもそもコンテンツ自体がシンプル(フローズン炭酸飲料)だからグラフィックデザインで差別化したいという理由もあるだろうが、海外に商品を展開するにあたって、現地に住む人々のクリエイティブに対するセンスに対応したいという理由ももちろんあるだろう。

ゴーギャンがタヒチで描いた絵のように、その土地の風景、空気の厚み、光の濃さによっても、描かれるグラフィックは変わるのかもしれない。

オーストラリア・メルボルンはストリートアートでも有名な都市だけれど、このパッケージデザインにはそんな「場所」にまつわるデザインセンスが上手く配されている。ストリートアートの街でポツンとベンチに置かれていたからこそ目に止まった、面白いグラフィック。