はじめに
なんとなく日々感じていたスタッフ間での業務の偏り。さらに、(忙しくなると特に)日々やらないといけない業務に押し出されて、緊急ではないが重要な事が犠牲になってしまっている現状がありました。
かといって業務が落ち着いている時は、アシスタントさんからすればどうしても指示待ちになってしまいます。
それもこれも全部、業務のプロトコルがないことが原因じゃね?
そういう職場でありがちな、「わかってるなら先に言ってよ」問題*にも手を打っておきたいしな。
*前の書類見て同じように書類作っといてと言われて作ったら、「あぁこのお客さんはこの場合こうだから」って後出しでダメ出しされるやつ。「業務裏マニュアル作成者私」が従業員の数だけある。
ということで、選択肢(手順書を作ったり)はいくつか考えられますが、弊社ではアセスメントをつくって、それを活用しながら一部業務を現担当者からアシスタントさんへ引き継ぎすることにしました。
アセスメントとは簡単にいうと、あいまいな目標(健康になりたい)を達成できたかどうかを定量的に誰にでも判断できる項目(週に4回144bpm以上をキープできるエクササイズを20分以上行う)にして、後で評価できるようにするためのチェックリストのようなものです。
取り組みの目標は以下のような感じになります。
・現担当者の業務負担を軽減する
・アシスタントさんに貿易業務に集中してもらう事で生産性を上げる。(広報とかの仕事もやってもらっていたのでそれは私がやるようにする)
・アシスタントさん自身の成長。(より自分の判断で動きやすくし、できることを増やす)
以下、現担当者をIさん、アシスタントさんをTさんとします。
アセスメントを使おうと思った理由
まず、Iさんの業務をマニュアル化するのが難しいことがありました。業務の性質上、どうしても文章にするには場合ごとの対応が多くなります。この場合はこうして、この場合はこうする。の分岐が多いため、おそらく新人さんが入ってきてもすぐ使えるような手順書を作るのは難しい(し、めんどくさい)。
それに加えて、コーチングを使って対話しながら業務移行を進めることで、業務を吐き出させられるIさんと業務を押し付けられるTさんという立場でなく、あくまで両者納得のもとに業務の共有と移行を行いたかったということがあります。(弊社では問題ありませんでしたが、場合によっては両者に業務移行の理由や目的を納得してもらう必要があるかもしれません。)
デメリットとしては、移行完了までに時間が掛かってしまうということが考えられました。
確かに大人数に一気に業務を振り分ける場合はやることリストを文書化して配布、OJTで逐次修正が早いのでしょうが、今回はあくまで1対1の業務移行であるのと、仕事を任される側の感情をケアしながら移行したかったので、時間コストについては目をつぶりました。移行後の生産性の伸びに期待です。
現状での課題は?
現状の課題は以下の通りです。
・Tさんに指示待ちの時間がある
・業務の偏りがある
実践
ここからは順に、実際にやったことを手順通りに振り返っていきます。
まず初めに、目標とする状態を決めていきます。
そのために、まずIさんとTさんを交えて、2ヶ月後にTさんにどんな状態になっていて欲しいかをブレストとかしながらイメージしていきます。そしてその状態を達成するための必要条件をあげていきます。
今回は以下の条件をピックアップしました。
・スケジュールを自信を持って決めることができる
・船の予約をする
・書類取得の指示を出す
・書類の郵送
それぞれやることは難しくないですが、自分一人で判断して進めるとなるとどれも責任がかかってくる業務です。
次に、それぞれの業務を、構成するアクションに分けていきます。
たとえば、「スケジュールを決める」の項目は、それぞれ以下のように分けました。
・注文がきたら逆算して船の出港日、積み込み日、納品日、その他諸作業日を仮決めできる
・メーカーごとのスケジュールを概算できる
・経理とスケジュールのすり合わせする時間を確保している
クリアできたらその条件を満たせていると言えるようなトピックです。
ほか条件もそれぞれ分解していきます。
それが済んだらいよいよコーチングです。
リスト化したアクションにチェックをつけていってもらいます。チェックの付け方は、Tさんが今現在項目に対してどれくらい自信があるかを主観で、それぞれできると思ったら◯、できないことには×、どちらでもない場合(やり方はわかるが自信がないなど)は△をつけてもらいます。
だいたい10%くらい◯がついていたように記憶しています(あやふや)。
それが終わったら、「すべてにチェックをつけてみて今どう感じているか、気づいたことは何か」を聞きます。
そうすると、郵送はできそうとか、スケジュールを決めるの項目はやり方がわかっていないかもしれないなど出てきます。
その話に耳を傾けたら、次は各項目△がついたものと×がついたものについて、「全ての項目で自信を持って◯をつけるために、これから2ヶ月間何をすればいいと思うか」を問いかけます。その際、必要に応じてアクションの項目を増やしたり、必要なフォローアップについても検討します。
例えばTさんの場合は、メールチェックの頻度が少ないという自覚があったので、「船の予約後30分に1回スケジュールの返信を確認する」を追加しました。
さらにアクションが決まったら、次回アセスメントチェックの日を決めます。この時は2ヶ月後に決めました。
つくったリストはgoogleスプレッドシートで共有しておきました。
経過
2ヶ月後、実際にもう一度アセスメントチェックをしてみると、自信を持ってできると◯をつけた項目が94%になっていました。
アセスメントの中にはうまく機能しないものや、なんでこんな項目を入れたんだろうというものもありましたが、それは見直しで修正します。必要に応じて付け足す場合もあります。
メリットは?
今回実際にやってみて感じたメリットは、やはりTさんの感情、特に自信があるかどうかにフォーカスして移行を進めたため、仕事のやらされ感をあまり感じさせずに、と同時に急に責任が重くなるという心理的負担をかけずに進められたことが良かったかなと感じています。心理的負担があるとミスしたりして生産性下がると思う。
最後に
アセスメント活用による業務移行は、業務を吐き出す人と受け取る人(あとファシリテーターがいればその人)との間で、コミュニケーションがしっかりとできることが大前提になっています。
「仕事は背中を見て学べ!」という理念をお持ちの方とは非常に相性が悪いです(というか無理)。
今回私もやってみて、改めて対話を重ねて、感情にフォーカスしながら仕事を進めていくことの大事さをあらためて学ぶことができました。
興味がある方はぜひ実践してみてはいかがでしょうか。