ショップバッグについて台湾の事例

海外で電車などに乗っていると、多分家で焼いたんだろうと思われるホールケーキを丸々お皿のままラップだけかけた状態で持ち込んでいる人や、カバンを持たずに本を持って歩いているような人も多い。そんな光景は、一見無味乾燥になりがちな電車内の風景にあって様々な想像(誰かの誕生日なのかな。どこまで持っていくのだろう。とか、この人の本棚には他にどんな本が飾られているのだろう。とか)を掻き立ててくれる。

一方お店で買い物をすれば、商品は大抵中身が見えないようになったプラスチックバッグや紙袋に入れられて渡される。袋に入っているものは当たり前だけれど持ち歩きやすいし、ものを買うという極めてプライベートな(欲求の顕在化とでも言おうと思えば言える)行為を他者の視線から守ってくれる。袋に自分の店の名前を入れるのもいい宣伝になる。

とはいえ、大抵のプラスチック袋はとてもお洒落でデザイン的にも優れているとは言い難いものが多い。単にお店から家まで自分の買ったものを誰にも中身が見えないように持ち帰るという機能さえあればそれで十分だと考えられているからだ。

けれど、今回台湾で買ってきた会社用のお土産を入れられたショッピングバッグは、そうは考えなかったらしい。

持ち手がくしゃくしゃなのは私が台湾からずっと手持ちで持って帰ってきたからだが、お店で商品を購入するとお店の人はまず透明な袋を取り出してそこへくしゃくしゃにした黄緑色の紙と商品を入れる。さらに店名の印刷された半透明な白いフィルムを片方の持ち手の穴にだけ通し半分に折って、下へ垂らす。フィルムの真ん中、折り目の部分には内側に両面テープが貼られているので、持ち運んでいるときにフィルムが動いたり取れてしまったりすることはない。

このショッピングバッグの面白い点は、中にどんなものを入れてもそのパッケージデザインがそれを包む袋のデザインの一部として取り込まれてしまうということだ。このお店はセレクトショップであり、もちろんパッケージデザインのみを基準として商品を集めているわけではないと思うが、このシンプルで目にも優しいデザインの袋は、中に入れられた商品から(それがどんな商品であろうと)、「グラフィック」を分離し、それを携える人の「ファッション」の一部として認識させてしまう。

袋としての実用的機能を持たせるだけでなく、パッケージデザインをファッションへと機能変化させてしまうことに成功した、素晴らしいデザイン。